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インバウンドLLMOとは?訪日客のAI検索で選ばれる対策と言語別の計測方法|2026年版

約19分で読めます

インバウンドLLMOとは、訪日外国人が母国語でChatGPTやGemini、Googleマップの「マップに相談(Ask Maps)」などのAIに質問したとき、自社の店舗・施設・サービスが正しく言及・引用されるように情報を整える取り組みです。国内向けのLLMOとの違いは「質問の言語」「使われるAI」「質問する場所(母国か日本国内か)」の3つが変わる点にあります。

2025年の訪日外客数は約4,268万人(日本政府観光局・推計値)と過去最高を記録しました。一方、2026年1〜6月は中国が前年同期比56.4%減、韓国が18.6%増、台湾が20.9%増と、市場の構成が大きく入れ替わっています。どの言語で、どのAIに、どんな質問をされたときに自社が出るのかを測らなければ、対策の優先順位は決められません。

本記事では、インバウンドLLMOの定義、必要とされる背景データ、2026年の言語の優先順位、具体的な7つの対策、そして言語別の計測方法までを解説します。

1. インバウンドLLMOとは何か

訪日客が母国語でAIに尋ねたとき、自社が回答に正しく登場する状態をつくる取り組みです。対象はAIの回答であり、検索順位ではありません。

LLMO(Large Language Model Optimization)は、ChatGPTやGeminiなどのLLMが回答を生成するときに、自社の情報が参照・引用されるようにWebサイトや外部の情報を整える最適化手法です。LLMOの基本的な考え方はLLMO用語集で整理しています。

インバウンドLLMOは、この考え方を訪日外国人向けに適用したものです。ポイントは、質問するのが日本語話者ではないという点にあります。

1-1. 国内向けLLMOとの3つの違い

国内向けのLLMOとインバウンドLLMOは、手法の土台は共通しています。違いは、前提となる3つの条件です。

比較軸

国内向けLLMO

インバウンドLLMO

質問の言語

日本語

英語・韓国語・繁体字・簡体字など母国語

使われるAI

ChatGPT、Gemini、AI Overviewなど

左記に加え、中国発のAI(豆包・千問など)、韓国のNaverなど市場ごとに異なる

質問する場所

国内

来日前の母国(旅マエ)と、来日後の日本国内(旅ナカ)

参照されやすい情報源

日本語の公式サイト、ポータル、口コミ

質問言語のページ、海外OTA、海外の旅行メディア、Googleマップ、動画

店名の表記

日本語表記

ローマ字・英語名・現地語名が混在しやすい

この違いから、国内向けに整えた日本語サイトだけでは、英語や韓国語で質問されたときに候補に入らないことが起こります。

1-2. インバウンドLLMOが対象にする業種

対象になるのは、訪日客が来日前または滞在中に比較・予約する業種です。飲食店、ホテル・旅館、体験・アクティビティ、観光施設、美容クリニック、小売(免税店)、交通・レンタルなどが中心になります。

自治体やDMO(観光地域づくり法人)にとっても、地域名で質問されたときに自地域のスポットが挙がるかは同じ構造の課題です。地域単位での考え方は都道府県別LLMO対策ガイドも参考になります。


2. なぜ今インバウンドLLMOが必要なのか

訪日客の総数が過去最高水準にあるなかで、旅行計画にAIを使う動きが市場によっては多数派になりました。日本国内でも2026年8月に、地図アプリ上でAIに相談できる機能が始まっています。

2-1. 訪日客数は過去最高、ただし市場構成は入れ替わっている

日本政府観光局(JNTO)の推計値によると、2025年の訪日外客数は約4,268万人で、2024年の約3,687万人を15.8%上回りました。2025年の国・地域別では、韓国が約946万人、中国が約910万人、台湾が約676万人、米国が約331万人の順です。

2026年に入ると構成が変わりました。2026年1〜6月の累計は約2,108万人(前年同期比2.0%減)で、内訳は次のとおりです。

国・地域

2026年1〜6月

前年同期比

韓国

約567万人

18.6%増

台湾

約397万人

20.9%増

中国

約206万人

56.4%減

香港

約130万人

2.2%増

出典:日本政府観光局「訪日外客数(2026年6月推計値)」(2026年7月15日発表)

総数は横ばいでも、どの言語で質問される機会が多いかは1年で変わっています。この点は第3章で言語の優先順位として整理します。

2-2. AIを旅行計画に使う割合は市場によって桁が違う

訪日客のAI利用に関する調査は複数ありますが、数値の幅が非常に大きいことに注意が必要です。

調査

対象

結果

インタセクト・コミュニケーションズ「2026年 春節期間の日本旅行に関する調査」(2026年1月15〜17日)

中国在住で春節に訪日予定の429人

90.4%が旅行計画に生成AI・AIアシスタントを利用

SAMURAI NINJA MUSEUM TOKYO with Experience の調査(2024年12月第3〜4週)

浅草の同館を訪れた外国人旅行者159人

旅行計画にAIツールを使ったのは6%。約7割はGoogleやYouTubeを最も影響した情報源に挙げた

Booking.com「AIに関するグローバル意識調査」(2025年8月発表)

33の国と地域の37,325名

89%が今後の旅行計画にAIを活用したいと回答

調査時期、対象市場、設問がそれぞれ異なるため、数値を直接比べることはできません。読み取れるのは、「訪日客はAIを使っている」と一括りにできないという点です。中国本土のように旅行計画のほとんどがAI経由になっている市場もあれば、GoogleやYouTubeの影響が依然として大きい層もあります。

この幅があるからこそ、自社の主要顧客の市場で、実際にどう表示されているかを測ることが出発点になります。

2-3. 旅ナカの店選びがAIに移り始めた

Googleは2026年8月、Googleマップで生成AIのGeminiと会話しながら場所を探せる「マップに相談(Ask Maps)」を日本で提供開始しました。2026年3月に米国などで英語版が先行し、今回の拡大で英語なら150以上の国と地域で利用できるようになっています。

この機能が訪日客にとって意味するのは、滞在中の店選びが「地図で探して口コミを読む」から「条件を言ってAIに絞り込んでもらう」へ変わり始めたことです。

実際の場面を想像してください。夜8時の渋谷、台湾から来た3人家族の父親が、Googleマップを開いて英語で「近くで子ども連れでも入りやすく、ベジタリアンメニューがあって、今から予約なしで入れる店」と相談する。AIは3軒を理由付きで挙げ、そのままルート案内に進む。ここに挙がらなかった店は、比較の対象にすら入っていません。

2-4. 日本語の検索ですら、インバウンド関連業種でAIの回答が当たり前になっている

当社の「LLMO傾向分析レポート」(30ジャンル・897クエリ、日本語Google検索、2026年7月25日〜8月3日)では、AI Overviewの平均出現率は86.5%(実測値)でした。インバウンドに関わる業種の出現率は次のとおりです。

ジャンル

AI Overview出現率(実測)

旅行

93.3%

美容クリニック

93.3%

EC・通販

93.3%

ホテル

83.3%

飲食店

76.7%

美容室

66.7%

これは日本語クエリでの計測です。英語や韓国語のクエリでの出現率は、この調査では測っていません。それでも、国内の日本語検索の段階で旅行・ホテル関連の質問の8〜9割にAIの回答が付いているという事実は、訪日客側の検索環境を考えるうえでの下限の目安になります。

同じ調査では、AI Overviewの引用元ドメインの1位がyoutube.com(826回)でした。先ほどの浅草の調査で、外国人旅行者の約7割がGoogleやYouTubeを最も影響した情報源に挙げていたことと合わせると、動画の存在はインバウンドLLMOでも無視できない経路だと考えられます。


3. 2026年はどの言語から対策すべきか

主要顧客の市場を起点にしつつ、2026年の市場動向からは韓国語と繁体字の優先度が上がっています。英語は欧米豪とアジアの共通語として常に必要です。

すべての言語を同時に整えるのは現実的ではありません。優先順位は「自社の実際の顧客構成」と「市場全体の動向」の2つで決めます。

3-1. 市場動向から見た言語の優先度

言語

主な市場

2026年の動向

主に使われるAI・検索

優先度の考え方

英語

米国、欧州、豪州、東南アジアの一部

米国は2026年5月・6月とも前年同月を上回った

ChatGPT、Gemini、Perplexity、Googleマップ

共通言語として最初に整える

韓国語

韓国

上半期は約567万人で最大市場

ChatGPT、Gemini、Naver

2026年は最優先候補

繁体字

台湾、香港

台湾は上半期20.9%増

ChatGPT、Gemini、Googleマップ

韓国語と並ぶ優先候補

簡体字

中国本土

上半期56.4%減

豆包、千問など中国発のAI

既存顧客が多い場合は維持、新規投資は慎重に

この表は市場全体の傾向です。たとえば中国本土からの団体客が売上の中心の施設であれば、簡体字の優先度は下がりません。自社の予約データや来店客の国籍比率を必ず先に確認してください。

3-2. 「翻訳」ではなく「その言語で聞かれる質問」に答える

言語対応でよくある誤りは、日本語ページを機械翻訳して終わらせることです。訪日客がAIにする質問は、日本人の質問とは中身が違います。

たとえば日本人なら「渋谷 焼肉 個室」と調べる場面で、英語話者は「Is there a yakiniku place in Shibuya where I can order in English and pay by card?」と聞きます。知りたいのは個室の有無より、英語で注文できるか、カードが使えるか、という条件です。翻訳だけのページには、その条件への答えが書かれていないことがほとんどです。


4. 訪日客はAIにどう質問するのか

訪日客の質問は「条件付き」で、しかも来日前と来日後で中身が変わります。対策は、この2つの場面ごとに想定質問を集めるところから始まります。

4-1. 旅マエと旅ナカで質問が変わる

場面

質問する場所

主なAI

質問の例(日本語訳)

求められる情報

旅マエ(計画段階)

母国

ChatGPT、Gemini、Perplexity、中国発のAI

京都で静かに泊まれる和風の宿を予算2万円以内で3つ

料金、立地、雰囲気、予約方法

旅ナカ(滞在中)

日本国内

マップに相談、Gemini、ChatGPT

今いる場所から歩いて10分以内、ハラール対応で今から入れる店

営業時間、現在地からの距離、対応条件、混雑

旅マエの質問では、AIは旅行メディアや予約サイト、公式サイトの多言語ページを参照する傾向があります。旅ナカでは、Googleマップ上の店舗情報と口コミの比重が高くなると考えられます。

4-2. 条件付きの質問ほど、具体的に書いた店が拾われる

訪日客の質問には、宗教・食事・言語・決済・子連れなど、国内客ではあまり出ない条件が入ります。代表的なものは次のとおりです。

  • 食事の条件:ハラール、ベジタリアン、ヴィーガン、アレルギー対応

  • 言語の条件:英語メニュー、英語を話すスタッフ、多言語の予約ページ

  • 決済の条件:クレジットカード、海外のQR決済、免税

  • 同行者の条件:子連れ可、ベビーカー可、車いす対応、大人数の団体

  • 時間の条件:深夜営業、早朝営業、雨の日でも楽しめる

「外国人歓迎」とだけ書いたページは、これらの条件付き質問の答えになりません。AIは、条件に合うと判断できる根拠が書かれたページを優先して参照します。

4-3. 「予約」という言葉で回答の参照先が変わる

株式会社ジャパンチケットホールディングスが2026年10月5日に実施した調査(ChatGPT・Geminiなど5つのAIに計76回質問)では、ChatGPTとGeminiに同じ質問をする際、「予約」に関する言葉を加えた8回すべてで予約方法や予約先が案内され、加えない8回では案内がなかったと報告されています。

訪日客が「予約できる店」を探す場面では、予約サイトや公式の予約ページが回答の根拠になります。予約導線が日本語の電話だけの店は、この時点で候補から外れやすいと考えられます。


5. インバウンドLLMOの具体的な対策7ステップ

AIが「この店は条件に合う」と判断できる材料を、訪日客の言語で、複数の掲載先に同じ内容でそろえることが対策の中心です。

5-1. ステップ1:英語表記と名称を1つに決め、全掲載先で統一する

店名や施設名のローマ字表記が掲載先ごとに違うと、AIは同じ店だと判断できません。「Sushi Taro」「Taro Sushi」「Sushi-Taro Shibuya」のように揺れている状態です。

  • 公式の英語名を1つ決める(必要なら韓国語・繁体字の表記も決める)

  • 公式サイト、Googleビジネスプロフィール、OTA、口コミサイトの表記をそろえる

  • 住所・電話番号の英語表記も同じ書式にそろえる

表記揺れがAIの言及判定にどう影響するかは、ブランド名の別表記・表記揺れを確認する方法で詳しく解説しています。

5-2. ステップ2:多言語の情報を画像やPDFではなくHTMLのテキストで載せる

メニュー、料金、営業時間、アクセス、予約条件が画像やPDFの中にしかない状態では、AIが内容を読み取りにくくなります。

  • 多言語ページは言語ごとに独立したURLで用意する

  • 料金・所要時間・キャンセル条件など、比較に使われる数値はテキストで書く

  • 日本語ページを更新したら、同じ日に多言語ページも更新する

日本語だけ料金を改定し、英語ページが古いまま残るケースは非常に多く見られます。AIは英語のページを読んで古い料金を回答してしまいます。

5-3. ステップ3:条件を明記した多言語FAQを置く

第4章で挙げた条件付きの質問に、一問一答で答えるFAQを各言語で用意します。FAQは、AIが回答を組み立てるときに最も抽出しやすい形式の1つです。

よくある質問(日本語訳)

回答で書くべきこと

ハラール対応はありますか

認証の有無、対応している料理、調理器具の扱い

英語のメニューはありますか

英語・韓国語・中国語メニューの有無、スタッフの対応言語

カードやQR決済は使えますか

利用できるブランドと決済サービス名

予約なしで入れますか

予約の要否、混む時間帯、予約方法

タトゥーがあっても入浴できますか(宿泊・温浴)

可否、条件、貸切風呂の有無

想定質問を集めるときは、実際に海外のお客様から受けた問い合わせ、口コミに書かれた質問、スタッフがよく聞かれることを起点にすると漏れが減ります。顧客が相談するきっかけから質問を設計する方法は、CEP分析から質問と回答ページを設計する方法でも整理しています。

5-4. ステップ4:Googleビジネスプロフィールを旅ナカの起点として整える

マップに相談(Ask Maps)は、Googleマップ上の場所の情報と口コミを分析して回答を作る仕組みです。旅ナカの質問に対しては、Googleビジネスプロフィールの情報がそのまま判断材料になると考えられます。

  • カテゴリ、営業時間、臨時休業を常に最新にする

  • 支払い方法、バリアフリー、子連れ対応などの属性を埋める

  • 英語の口コミにも英語で返信する

  • 料理や店内の写真を定期的に追加する

5-5. ステップ5:OTA・口コミサイト・海外メディア・動画の情報を整合させる

AIは公式サイトだけでなく、予約サイト、口コミサイト、旅行メディア、動画を組み合わせて回答します。外部の掲載先で古い情報や誤った情報が残っていると、AIはそれを回答に使ってしまいます。

  • 海外OTA(Klook、KKday、Trip.comなど)の掲載内容を公式サイトとそろえる

  • 中国本土の顧客が多い場合は、大衆点評や小紅書などの情報も確認する

  • 海外の旅行メディアやYouTubeで紹介された内容が現状と合っているか確認する

当社調査でAI Overviewの引用元1位がyoutube.comだったことを踏まえると、施設や料理の様子が伝わる動画を公式に用意しておくことも有効な選択肢です。

5-6. ステップ6:多言語で予約できる導線をつくる

AIに推薦されても、予約が日本語の電話だけでは訪日客は離脱します。

  • 多言語の予約ページ(事前決済があればなお良い)を用意する

  • 公式サイト、Googleビジネスプロフィール、SNSから同じ予約ページにリンクする

  • 予約ページの料金・キャンセル条件を公式サイトやOTAとそろえる

5-7. ステップ7:構造化データと言語の指定を実装する

AIや検索エンジンがページの内容と言語を正しく理解できるよう、技術的な情報を付けます。

  • 店舗・施設の情報にLocalBusiness(業種に応じてRestaurantやHotelなど)を実装する

  • FAQにはFAQPageを実装する

  • 言語ごとのページをhreflangで相互に関連付ける

  • AIのクローラーをrobots.txtで不用意にブロックしていないか確認する

構造化データの実装をスポットで外注する場合、相場は数万〜十数万円が目安です。


6. インバウンドLLMOの効果をどう測るか

「どの言語で」「どのAIに」「どんな意図で」質問されたときの結果かを分けて測ります。言語を混ぜて集計すると、どこを直すべきかが見えません。

6-1. 「言語×AI×質問の意図」のマトリクスで質問を設計する

インバウンドLLMOの計測では、国内向けの計測に「言語」の軸が加わります。最初は次のような小さな表から始めるのが現実的です。

質問の意図

英語

韓国語

繁体字

エリア×業種のおすすめ(例:渋谷の焼肉)

3問

3問

3問

条件付き(ハラール・子連れ・カード可など)

3問

3問

3問

予約を含む質問

2問

2問

2問

自社名を指定した質問(評判・料金)

2問

2問

2問

この例で計30問です。質問は人が設計し、同じ意図で言い回しを変えたバリエーションも用意しておくと、AIの回答のぶれを評価しやすくなります。言い換えの作り方は同じ意図を保つ質問のバリエーション設計で解説しています。

6-2. 見るべき指標

指標

意味

インバウンドでの見方

言及率

質問に対して自社名が回答に出た割合

言語ごとに分けて比較する

引用率

自社のページが回答の参照元として示された割合

多言語ページが引用されているかを見る

引用元ドメイン

回答がどのサイトを根拠にしているか

公式サイトよりOTAや海外メディアが多いかを確認する

情報の正確性

営業時間・料金・対応条件が正しく書かれているか

古い情報や閉店扱いなどの誤りを検知する

競合との言及シェア

同じ質問で競合がどれだけ出ているか

同じエリア・業種の競合と比べる

6-3. 計測する場所と端末にも注意する

旅ナカの質問は、日本国内のスマートフォンから行われます。AIの回答は、質問した地域や端末によって変わることがあります。地域・デバイス別の差を確かめる方法は地域・デバイス別計測の比較シートを参考にしてください。

6-4. 計測ツールの対象外になる経路は手動で補う

LLMOチェキは、ChatGPT、Gemini、Perplexity、Claude、Google AI Overview、AI Modeなど8つのAIエンジンを横断して、言及率・引用率を日次で計測できるツールです(当社提供)。競合との言及シェア比較、引用元ドメインの分解、誤情報やネガティブな言及の検知にも対応しています。

一方で、中国本土で使われる豆包や千問、韓国のNaverなどは対象外です。簡体字圏や韓国の顧客が多い事業者は、主要な質問を月1回程度、担当者が実際に入力して回答を記録する運用を組み合わせてください。

6-5. 効果が出るまでの期間

当社観測では、多言語ページの整備や外部掲載先の修正を行ってから、言及率に改善傾向が見え始めるまでに約3か月、投資判断に足る評価ができるまでに約6か月かかります。言語ごとに変化の速さが異なることも多いため、言語別に推移を追うことが重要です。


7. 業種別に押さえたい論点

業種によってAIが参照する情報源と、訪日客が重視する条件が異なります。自社の業種で最も効く一点から着手してください。

業種

AI Overview出現率(日本語・実測)

業種固有の論点

最初に整えるもの

飲食店

76.7%

食事の条件(ハラール・ベジタリアン)で絞り込まれる

多言語メニューと条件のFAQ、Googleビジネスプロフィール

ホテル・旅館

83.3%

予算・雰囲気・アクセスで比較され、OTAが参照されやすい

英語ページの料金と設備情報、OTAとの整合

旅行・体験

93.3%

「予約できるか」で回答が変わる

多言語の予約ページ、所要時間とキャンセル条件

美容クリニック

93.3%

料金と安全性への関心が高く、誤情報の影響が大きい

多言語の料金表、施術の説明、医療広告の規制に沿った表現

美容室

66.7%

外国人の髪質や言語対応が条件になる

対応できる施術と言語の明記、予約導線

美容クリニックなど医療に関わる業種では、多言語ページでも医療広告ガイドラインなどの規制が適用されます。翻訳の段階で表現が誇張されていないか、日本語版と同じ基準で確認してください。


8. インバウンドLLMOでよくある失敗

多くの失敗は「日本語側だけ更新している」ことに起因します。多言語の情報は、作った時点から古くなり始めます。

失敗

起きること

防ぎ方

機械翻訳のページを数年放置している

古い料金や閉店したメニューをAIが回答する

日本語ページの更新と同時に多言語ページも更新する運用にする

英語の店名が掲載先ごとに違う

AIが別の店として扱い、言及が分散する

公式の英語名を1つに決めて統一する

メニューや料金が画像の中だけにある

AIが条件を読み取れず、条件付きの質問で拾われない

テキストで掲載する

「外国人歓迎」とだけ書いている

具体的な条件の質問に答えられない

ハラール、カード可などを具体的に書く

日本語で計測して安心している

訪日客の言語では出ていないことに気づけない

言語ごとに分けて計測する

1つのAIの結果だけで判断する

AIごとに参照先が違うため、全体像を誤る

複数のAIで同じ質問を比較する


9. インバウンドLLMOの費用相場

社内で整える部分と外注する部分を分けると、費用の見通しが立てやすくなります。計測ツールは月額数千円〜数万円台が一般的です。

項目

相場

LLMOのスポット診断

20万〜100万円

月額のLLMOコンサルティング

月額20万〜50万円

制作・実装を含む一気通貫の支援

月額50万円以上

構造化データの実装(スポット外注)

数万〜十数万円

計測ツール

月額数千円〜数万円台

多言語ページの翻訳・制作費は、言語数とページ数で大きく変わります。まずは英語と、自社の最大顧客市場の言語の2言語に絞り、計測で効果を確かめてから言語を増やすと、無駄な投資を避けやすくなります。


10. よくある質問(FAQ)

Q1. インバウンドLLMOとは何ですか?

インバウンドLLMOとは、訪日外国人が英語・韓国語・中国語などの母国語でChatGPTやGemini、Googleマップの「マップに相談(Ask Maps)」などのAIに質問したとき、自社の店舗や施設が正しく紹介されるように情報を整える取り組みです。国内向けのLLMOと比べて、質問の言語、使われるAI、質問する場所(母国か日本国内か)が異なります。

Q2. インバウンドLLMOとMEOは何が違いますか?

MEOはGoogleマップの検索結果で上位に表示されることを目指す対策です。インバウンドLLMOは、AIが作る回答の中で自社が推薦・引用されることを目指します。ただし、マップに相談のようにGoogleマップ上でAIが回答する機能では、Googleビジネスプロフィールの情報が判断材料になるため、MEOで整えた情報はインバウンドLLMOの土台にもなります。

Q3. 日本語のサイトしかない場合、何から始めればよいですか?

英語の店名を1つに決め、Googleビジネスプロフィールの情報を最新にするところから始めるのが現実的です。そのうえで、英語のページを1枚用意し、料金・営業時間・予約方法・対応できる条件をテキストで書きます。2言語目は、自社の来店客や予約者の国籍比率を見て決めてください。

Q4. 中国からのお客様向けには何をすればよいですか?

中国本土ではChatGPTやGeminiへのアクセスに制約があるため、豆包や千問など中国発のAIが使われています。中国語の公式ページに加え、大衆点評や小紅書などの中国の訪日客がよく見る掲載先で、正しい情報をそろえることが基本です。これらのAIは多くの計測ツールの対象外のため、担当者が定期的に質問して回答を確認する運用が必要です。

Q5. 機械翻訳でも効果はありますか?

日本語しかない状態よりは改善が見込めますが、翻訳しただけのページは訪日客の条件付きの質問に答えていないことが多くあります。翻訳の前に、その言語の利用者が何を聞くかを洗い出し、その答えを書き足すことが重要です。料金や対応条件など誤ると困る情報は、人が必ず確認してください。

Q6. インバウンドLLMOの効果はどう測ればよいですか?

言語ごとに想定質問を作り、複数のAIで自社が言及されるか、引用されるか、情報が正しいかを定期的に記録します。言語を混ぜて集計すると改善点が見えなくなるため、「言語×AI×質問の意図」の表で分けて測ってください。当社観測では、改善傾向の確認に約3か月、投資判断に足る評価に約6か月かかります。

Q7. 小規模な店舗でもAIに推薦されますか?

可能性はあります。AIは店舗の規模より、質問の条件に合うと判断できる根拠があるかを重視する傾向があります。ハラール対応、英語メニュー、カード可など、自店が対応できる条件を具体的に書いておくことで、条件付きの質問で候補に入りやすくなると考えられます。


まとめ:インバウンドLLMOは「言語ごとに測る」ことから始まる

インバウンドLLMOは、訪日客が母国語でAIに質問したときに、自社が正しく紹介される状態をつくる取り組みです。国内向けのLLMOとの違いは、質問の言語、使われるAI、質問する場所の3つにあります。

2026年は、韓国と台湾からの訪日客が伸び、中国からの訪日客が大きく減るなど、市場の構成が入れ替わっています。旅ナカでは、Googleマップのマップに相談(Ask Maps)が日本でも使えるようになりました。どの言語・どのAIで自社が出ていて、どこで出ていないのかを把握することが、対策の優先順位を決める唯一の方法です。

次のアクションは3つです。

  1. 自社の顧客の国籍比率を確認し、優先する2言語を決める

  2. 英語の店名を統一し、Googleビジネスプロフィールと英語ページを最新にする

  3. 言語ごとに10問程度の想定質問を作り、主要なAIで現状を記録する

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調査概要

  • 調査名:LLMO傾向分析レポート

  • 調査主体:株式会社Itera(LLMOチェキ)

  • 調査対象:30ジャンル・897クエリ(日本語Google検索)

  • 調査期間:2026年7月25日〜8月3日

  • 実測値 / 推定値の区別:AI Overview出現率、ジャンル別出現率、引用元ドメインはいずれも実測値

本記事で参照した外部データ

  • 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年推計値)」「訪日外客数(2026年6月推計値)」

  • インタセクト・コミュニケーションズ「2026年 春節期間の日本旅行に関する調査」(2026年3月発表)

  • SAMURAI NINJA MUSEUM TOKYO with Experience 外国人旅行者向けAI利用調査(2025年1月発表)

  • Booking.com「AIに関するグローバル意識調査」(2025年8月発表)

  • Google「Google マップの新機能『マップに相談』を日本で提供開始」(2026年8月)

  • 株式会社ジャパンチケットホールディングス「生成AIの回答に表示された情報源の調査」(2026年10月5日実施)

本記事の調査データは、出典として「LLMOチェキ調べ(株式会社Itera)/https://llmocheki.com/report/llmo-trend」をご記載いただければ、引用・転載自由です。

編集責任者:武藤 尭行(株式会社Itera 代表取締役)| この記事は制作方針に沿って作成し、出典を確認したうえで公開しています。