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【考察】AI Overview出現率86.5%が意味すること|30ジャンル897クエリ調査から読み解く7つの示唆

約8分で読めます 著者: 武藤 尭行

株式会社Iteraが公開しているLLMO傾向分析レポートは、30ジャンル・897クエリを対象に日本語検索でのAI Overview出現状況を継続計測したものです(調査期間2026年7月25日〜8月3日)。全体平均でAI Overview出現率86.5%、ゼロクリック率(推定)59.0%、CTR低下率(推定)51.9%。この記事では、レポートの数値そのものではなく、そこから何を読み取り、どう動くべきかを考察します。結論を先に言えば、注目すべきは平均値ではなくジャンル格差と引用元の偏りです。

考察①:平均86.5%より、30ポイントのジャンル格差を見る

全体平均は意思決定に使えません。自社ジャンルの数字だけが、自社の投資判断の根拠になります。

レポートのジャンル別出現率を並べると、上位と下位で大きな開きがあります。

位置

ジャンル

出現率

最高

SaaS/リフォーム/士業

96.7%

不動産

96.6%

EC・SEO会社・マーケ会社・人材紹介・引越し・旅行・美容クリニック

93.3%

平均

全30ジャンル

86.5%

飲食店/結婚式場

76.7%

歯科医院

73.3%

最低

美容室

66.7%

SaaSの96.7%と美容室の66.7%では、直面している現実がまったく違います。前者は検索結果のほぼすべてでAIの回答が上に出る環境、後者は3回に1回はAIの回答が出ない環境です。「AI検索対策は必要か」という問いへの答えは、業界によって温度が変わります。

ここから導かれる実務上の示唆は明確です。他社の記事やセミナーで引用される「平均◯%」は、自社の投資判断には使えません。自社ジャンルの数字を確認し、それを起点に優先順位を決めてください。

考察②:引用元1位youtube.comが示す、動画の位置づけ

引用回数826回。2位のmoneyforward.com(76回)の10倍以上という異常な偏りです。

レポートの引用元ドメインランキング上位10件を見ると、構造がはっきり分かります。

順位

ドメイン

引用回数

1

youtube.com

826

2

moneyforward.com

76

3

note.com

73

4

hotpepper.jp

62

5

google.com

59

6

suumo.jp

55

7

freee.co.jp

46

8

my-best.com

42

9

coeteco.jp

37

10

rakuten.co.jp

36

YouTubeの突出ぶりは、単に「動画が人気だから」では説明がつきません。Googleが自社プラットフォームを引用しやすい構造にあること、動画には文字起こしという機械可読なテキストが伴うこと、そして「やり方」「使い方」を問うクエリで動画が回答として適していること。複数の要因が重なった結果と考えられます。

実務への含意は2つあります。第一に、テキストコンテンツだけでLLMOを考えるのは片手落ちです。解説動画をYouTubeに置き、正確な字幕・概要欄・チャプターを整備することは、AI引用の獲得手段になり得ます。第二に、note・my-best・SUUMO・ホットペッパーといった第三者プラットフォームの存在感です。自社ドメインでの引用獲得が難しいジャンルでは、これらに掲載されること自体が現実的な露出戦略になります。

考察③:高出現率ジャンルの共通点は「無形・高額・比較検討型」

上位を占めるのは、SaaS・リフォーム・士業・不動産・M&A。いずれも購入前に大量の情報収集が発生する領域です。

96%台に並んだジャンルを見ると、共通する性質があります。商品が無形で仕様を比較しにくい、単価が高く失敗のコストが大きい、専門用語が多く前提知識の学習が必要、そして検討期間が長い。この4条件が揃う領域では、ユーザーは「まず理解するための検索」を大量に行います。

AI Overviewは、まさにこの理解のための検索に最適化された機能です。「〇〇とは」「〇〇の相場」「AとBの違い」といった問いに要約で答えるのが得意な以上、こうしたクエリが多いジャンルで出現率が高くなるのは構造的な帰結です。

逆に言えば、これらのジャンルの企業にとって、情報提供型コンテンツによる集客モデルは根本的な見直しを迫られています。「相場を解説する記事で集客し、問い合わせにつなげる」という定番の型は、相場の説明がAIの回答内で完結してしまうため機能しにくくなります。必要なのは、AIが要約できない情報(自社の実績データ、個別の診断、シミュレーター)への転換です。

考察④:低出現率ジャンルは「安全」ではない

美容室66.7%、歯科医院73.3%、飲食店76.7%。数字は低いものの、これは猶予であって安全ではありません。

低出現率のジャンルには、店舗型・ローカル型が並びます。理由は明快で、「〇〇駅 美容室」のような検索では、AIが要約するより地図と店舗リストを出す方が有用だからです。実際、レポートの検索結果要素の集計ではローカルパックの出現率は6.2%となっており、店舗系クエリではこの枠が機能していると考えられます。

ただし、3つの理由から楽観はできません。

第一に、出現率が低くても影響がゼロではない点です。美容室でも3回に2回はAI Overviewが表示されており、ゼロクリック率は53.5%と過半を超えています。

第二に、推移データが示す不安定さです。レポートの日別推移を見ると、美容室は7/30時点で88%だった出現率が7/31に63%へ大きく下がっています(ただしこれは計測基盤の変更に伴う不連続であり、レポート内でもその旨が注記されています)。数値の解釈には注意が必要ですが、いずれにせよジャンル別の出現率は固定ではありません。

第三に、AIモードの展開です。対話型のAI検索が普及すれば、「今夜6人で入れる個室のある店」のような条件相談型の質問が増え、店舗系ジャンルでもAI回答経由の選択が一般化していきます。今の低出現率は、準備のための時間だと捉えるのが妥当です。

考察⑤:「他の人はこちらも質問」89.0%が示すクエリファンアウトの痕跡

AI Overview(86.5%)より、関連する検索(89.6%)と他の人はこちらも質問(89.0%)の方が出現率が高い。この事実は見落とされがちです。

レポートの検索結果要素の集計で興味深いのは、自然検索98.6%に次いで、関連検索と関連質問がAI Overviewを上回っている点です。

この2つは、Googleが「このクエリの背後には、こういう質問群がある」と理解している内容の可視化です。つまり、AI検索の内部で起きているクエリファンアウト(1つの質問を複数のサブクエリに分解して並列検索する仕組み)の、目に見える断片だと解釈できます。

実務的には、無料で使えるサブクエリの推定材料が、検索結果の中に常に表示されているということです。自社の主要クエリで検索し、「他の人はこちらも質問」に並ぶ質問群をすべて拾い、自社コンテンツがそれぞれに答えているかを確認する。これはツールなしで今日できる、精度の高いコンテンツ監査になります。

考察⑥:1位のCTR13.7%が意味する、順位の価値の再定義

推定値ではありますが、1位のCTRが従来目安28.4%の半分以下になるという試算は、KPI設計の前提を揺さぶります。

レポートの順位別CTR推定を見ると、1位13.7%(従来目安28.4%)、3位5.2%(同10.9%)、5位2.5%(同5.3%)と、どの順位でもおおむね半減しています。なお、これは実測のクリック率ではなく、一般的な順位別CTRにAI Overview出現率を反映させた推定値であることがレポート内で明記されています。

この試算が示すのは、順位が無意味になったということではありません。同じ順位から得られる流入量が構造的に減った、ということです。含意は3つあります。

第一に、流入予測モデルの更新が必要です。「1位を取れば月◯セッション」という過去の換算式は、そのままでは使えません。第二に、順位改善のROI計算が変わります。3位から1位への改善で得られる増分が従来より小さくなるため、同じ工数を「引用される構造への改修」に振り分けた方が合理的な場面が出てきます。第三に、KPIの複線化です。順位に加えて、AI回答内での言及・引用、指名検索数、流入の質(CVR)を並べて評価する体制が必要になります。

考察⑦:計測の連続性という、地味だが決定的な論点

レポートは、計測基盤の変更による数値の不連続を明示しています。この誠実さ自体が、LLMO計測の本質を示しています。

レポートの推移セクションには、7/31以降は各ジャンル30件、それ以前は100件の計測基盤による値であり、対象クエリ数が異なるため境目で数値が不連続になる、という注記があります。実際、多くのジャンルで7/30から7/31にかけて数値が下がっています。

これは欠陥ではなく、計測というものの性質です。AIの回答は日々揺れ、計測条件が変われば数値も動く。だからこそ、単発の数字ではなく、同一条件での継続観測に意味があります。

企業がLLMOに取り組む際も同じです。ツールを乗り換えたり、計測クエリを入れ替えたりすれば、数値の連続性は途切れます。ベースラインの計測を早く始めること、計測条件をむやみに変えないこと、変える場合は不連続を記録に残すこと。地味ですが、半年後に効果を証明できるかどうかは、この運用の丁寧さで決まります。

自社ジャンルの数字をどう使うか|3つの実務ステップ

レポートを読んだ後にやることは3つです。

第一に、自社ジャンルの3数値(出現率・ゼロクリック率・CTR低下率)を控え、社内の共通認識にします。「AI検索の影響」という抽象論を、自社ジャンルの具体的な数字に置き換えるだけで、社内の議論の質が変わります。

第二に、自社の主要クエリ10〜30本で、実際にAI Overviewが出るか、出るなら誰が引用されているかを手で確認します。ジャンル平均と自社クエリの実態は一致しないことがあり、ここでのギャップが打ち手の起点になります。

第三に、ベースラインの計測を始めます。施策の前に数字を取らなければ、効果は証明できません。手動記録でも構いませんが、複数エンジン・複数クエリになると工数が破綻するため、ツールでの自動化が現実的です。

まとめ:平均値ではなく、自社の数字で判断する

30ジャンル897クエリの調査が示したのは、AI検索の影響が「業界全体の平均」ではなく「ジャンルごとの固有の現実」として現れているということです。出現率96.7%のSaaSと66.7%の美容室では、打つべき手も緊急度も違います。

そして引用元の偏り(YouTubeが2位の10倍)、関連質問の高い出現率(89.0%)、順位別CTRの半減。これらはいずれも、従来のSEOの前提を静かに書き換えています。

最新のジャンル別データはLLMO傾向分析レポートで継続更新されています。まず自社ジャンルの数字を確認し、次に自社クエリでの実態を測ってください。LLMOチェキ(llmocheki.com)では、8つのAIエンジンでの自社の言及・引用状況を、初期費用0円・カード登録不要で計測できます。


出典・調査概要

  • 出典:LLMO傾向分析レポート(LLMOチェキ調べ/株式会社Itera)

  • URL:https://llmocheki.com/report/llmo-trend

  • 調査対象:30ジャンル・897クエリ(日本語Google検索)

  • 調査期間:2026年7月25日〜2026年8月3日

  • 実測値:AI Overview出現率、検索結果要素の出現率、引用元ドメイン

  • 推定値:順位別CTR、ゼロクリック率、CTR低下率(いずれもモデルによる算出であり、実際の流入数・クリック率を保証するものではありません)

本レポートの数値を引用される場合は、出典として「LLMOチェキ調べ(株式会社Itera)/https://llmocheki.com/report/llmo-trend」をご記載ください。

よくある質問

このレポートの数値は、他社の調査と比べてどうですか?
調査手法(対象クエリ・ジャンル構成・計測時期・判定基準)が異なるため、他社調査との単純比較は避けるべきです。海外調査(Pew Research CenterやAhrefs)も存在しますが、英語圏のデータであり日本語検索への直接外挿はできません。重要なのは、同一手法で継続計測された数値の推移を追うことです。
推定値(ゼロクリック率・CTR低下率)はどこまで信じられますか?
レポート内で明記されている通り、これらはモデルによる算出であり、実際の流入数やクリック率を保証するものではありません。使い方としては、絶対値を鵜呑みにするのではなく、ジャンル間の相対比較と傾向の把握に用いるのが適切です。自社の実数値は、Search Consoleの実測データと併せて確認してください。
自社ジャンルがリストにない場合は?
近い性質のジャンルを参照するのが現実的です。無形・高額・比較検討型ならSaaSや士業(96%台)、店舗・ローカル型なら美容室や飲食店(66〜76%台)が目安になります。そのうえで、自社の主要クエリでの実測を必ず行ってください。
YouTubeが引用1位なら、動画を作るべきですか?
ジャンルによります。「やり方」「使い方」「比較」の質問が多い領域では、解説動画とその字幕・概要欄がAI引用の獲得手段になり得ます。一方、地域の店舗選びのような領域では効果は限定的です。まず自社の主要クエリのAI回答で、動画が引用されているかを確認してから判断してください。
出現率が低いジャンルは、対策を後回しにしていいですか?
優先順位を下げることは合理的ですが、後回しにすべきではありません。低出現率ジャンルでもゼロクリック率は50%を超えており、AIモードの展開で状況は変わり得ます。最低限、指名クエリでの誤情報チェックとベースライン計測は始めておくことを推奨します。